実物盆栽に実を付ける その1  2007.06

紫式部の花が咲いても実が付かないという問い合わせが昨年ありました。また、さんしゅゆに実が付かないというお話も何度かお聞きします。実を付ける盆栽樹種には、実を付けるにあたっていくつかの共通点があります。それをまず知っておくと、取り扱いもしやすくなります。

1,雌雄異株の場合
大半の方はご存知のことですが、同じ樹種でも実を付ける雌木と花粉を出す雄木とがある種類です。庭木や野生木は近くに雄木がなくても実がとまることはありますが、盆栽の場合雄雌双方隣り合わせで置く方が実は付きやすいので、実を付けるための雄木を用意することをおすすめします。一般的盆栽樹種の中で雌雄異株の種は梅もどき・ツゲ・クロガネモチなどのモチノキ属、つる梅もどき(イワウメヅル)、まゆみ、やぶさんざし、老爺柿、いちょう、アオツヅラフジ、熊柳、さんしょう、さるなしなどが上げられます。

2,同属他品種の花粉で実を付ける場合
一つの花におしべ・めしべがあっても自家受粉せず、多品種の花の花粉が必要な場合です。りんご属の中に深山海棠・ズミ・姫りんご・姫国光などがありますが、これらは多品種の花粉でお互いが実を付けますので、開花期に一ヶ所に寄せておけば受粉します。その他なし属やスモモ・アンズなども同様ですが、これらは開花期に隣り合わせに置くだけでなく、人工的に花粉付けしないと結実しにくいです。桃・スモモ・アンズ・梅・ソルダムなどは同属で、それぞれの花粉で着果します。この2,の分類に入るその他の樹種はくちなし、寒ぐみなどがあります。

3,1本の樹に雄花・雌花が咲く場合
この場合、自家受粉する場合と他の樹の花粉を必要とする場合とがあります。前者はミズナラ・柏・コナラ・ウバメガシなどのコナラ属、カリン、マルメロ、山柿などがあります。後者はビナンカズラ、あけび、ムベなどで、他の樹の雄花を取って人工受粉させる方が実成りは確実です。

その他、花が咲けば1本だけでも実を付けやすい樹種として、さんざし・タチバナモドキ(ピラカンサ)などのサンザシ属、紅(白)シタン、紫式部、エゴ、クコ、キンズなどのミカン属、メギ、千成柿、ゆすら梅(庭梅)、西洋かまつかなどがあります。ただ、クコは秋咲く花にしか実はとまりません。

また、全般に植物は自家受粉を嫌います。雄花(おしべ)の花粉を出す時期と雌花(めしべ)の受粉しやすい時期に時間差のある種類もあります。一般に同じ樹種でも開花期に複数本を寄せて置いた方が実がとまりやすい場合が多く、以下の樹種は複数本あれば棚場に寄せて置く方がよいでしょう。さんしゅゆ・山ぼうしなどのミズキ属、こまゆみ、つりばななどのニシキギ属、がまずみ・やぶてまり・カンボクなどのガマズミ属、ヒュータンボク・ウグイスカグラなどのスイカズラ属、かまつか、サワフタギなどです。

次回は、実の付かない原因をもう少し詳しく考えます。

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 樹づくり一口メモ

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